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おちばと枯れ葉と


映画『枯れ葉』より Photo: Malla Hukkanen


 11月の終わりに、大学時代の友人と会った。年賀状のやりとりだけ細々と続いていたが、実際に顔を合わせるのは20年ぶりくらいで、待ち合わせ場所でわからなかったら、ちょっと気まずいなと思ったりもしたが、杞憂だった。おおきなジョッキに注がれたドイツビールで乾杯した。お代わりするうちに、友人が「なんだか肉が食べたくなってきたぞ」と牛タンの煮込みを注文したりして、にぎやかな土曜の午後だった。


 12月になって、詩人の三木卓さんが亡くなったという、淋しいニュースが届いた。三木さんが翻訳した、アーノルド・ローベルの絵本「がまくんとかえるくん」シリーズに、「おちば」というおはなしがある。がまくんとかえるくんが、相手の家の落ち葉をこっそり片づけて、よろこばせてあげよう! という素晴らしいアイデアを思いつき、それぞれに実行する。おはなしの最後に描かれた、がまくんとかえるくんの寝顔は、家の庭を散らかす木枯しなど、どこ吹く風の安らかさで、何度読み返しても、心がぽかぽかする。「いずれも、誰かに、そうしなさい、そうあるべきだと強制されてそうしているのではない。主人公たちは、自分がそうなってしまうからそうしているだけであり、だからおもしろいのである。そして、そのユーモラスな世界は、ローベルのやさしさにつつまれている」と、ローベル作品の魅力について、三木さんは語っていた(教育出版・教師用指導書「自然のこころをそのままに」より)。


 アキ・カウリスマキ監督の映画もまた、カウリスマキ監督のやさしさにつつまれている。新作「枯れ葉」では、ウクライナ侵攻のニュースが流れるヘルシンキの街で、厳しい暮らしのなかでも、自分を曲げずに生きるアンサ(アルマ・ポウスティ)とホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)のラブストーリーが描かれる。お互いの名前も知らぬまま、デートっぽいひとときを共にした二人の、別れ際のシーンに胸をつかれた。自分の電話番号を書きつけたアンサは、そのメモを半分に折ってから、ホラッパに手渡す。受け取った紙きれを、ホラッパがさらに半分に折り、ポケットにしまう。丁寧な仕草に、無口な二人の誠実さを感じて、ときめいた。その後、二人の距離はなかなか縮まらないのだが、女友だちと色鮮やかなジュースを飲みながら、ホラッパのことをいたずらっぽく笑うアンサや、アンサの真っ赤な嘘をするりと見逃す看護師などもチャーミングだ。そして、黄金色の枯れ葉が輝くラストシーンには、心底元気づけられた。いろいろとつらいことが多いけれども、若さを失ってしまっても、ちゃんと生きていかなくちゃと思う。再会した友人と約束した、年末の映画鑑賞が待ち遠しい。


題名:『枯れ葉

原題『KUOLLEET LEHDET』/英語題『FALLEN LEAVES』監督・脚本/アキ・カウリスマキ 出演/アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネンほか 配給/ユーロスペース 製作年/2023年 製作国/フィンランド・ドイツ 81分 12月15日からユーロスペースほか全国公開

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