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2025年映画ベストテン+3

  • review103
  • 2025年12月31日
  • 読了時間: 7分



岩根彰子のベストテン+3




ここ数年続いてきた、世界中がさまざまな局面で瀬戸際にいる感覚が、いよいよ本当の瀬戸際を迎えつつあるように思えた2025年。映画も同じく瀬戸際を感じさせる作品が強く印象に残った。

アジアのユニークな国」は、アジアの片隅の日本の片隅のどこにでもあるような一軒家で、義父の介護と自営の違法風俗というふたつのケアを行き来する主人公・曜子が持つギリギリのバランス感覚がたまらなく面白かった。チラシに書かれた「ただ、わくわくする77分間」という惹句のとおり、見ながらわくわくが止まらなかったのは、この作品が社会としっかり接続していると感じられたからこそだと思う。こういう形で「エンタメに政治を持ち込んだ」、監督の手腕に感服。

同様に社会との接続という点で、びっくりするほどストレートだった「ワン・バトル・アフターアナザー」。ポール・トーマス・アンダーソンの作品は、異常なほどのこだわりと熱量を持って、ある一点を深く掘り下げていく主人公を描いてこそ面白いと思うのだが、本作はもう少し広く射程を取り、世界へ向かってきちんと手を伸ばしていた。それはジェームズ・ガンの「スーパーマン」も同様で、裏を返せば彼らがこれほどストレートに社会を描かざるを得ないほど、今の世界は危機的状態なのだということか。それでいて、どちらの作品もエンターテインメントとして第一級なのだから凄い。

 

主人公・パンジーの果てしない孤独に圧倒された「ハード・トゥルース」。人に認めてもらえなかった。愛されなかった。長い時間をかけて繰り返し受けてきた小さな傷が、パンジーの心を損なっていったのだろう。理解も共感もできない相手でも、その内側に心があることだけは忘れてはいけないと強く思う。インドの都市ムンバイでままならない人生を送る女性たちの姿を描いた「私たちが光と想うすべて」は、たとえば眠れない夜を照らすスマートフォンのライトのように、その瞬間に誰か一人だけが必要とする小さな光のような作品だった。そんな光をそっとあつめたようなラストカットの美しかったこと。一方、ヴァチカンで生きるおじさんたちの権謀術数を延々と描いた末の、ラストの一撃が鮮烈だった「教皇選挙」。表舞台で動き回る司祭たち(男)と、食事の支度など裏方仕事を担当するシスターたち(女)の対比も鮮やか。少し前なら、その違和感に気づかなかったかもしれない。

 

ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地で故郷を守ろうと現実にカメラを向けるパレスチナ人青年と、彼に協力するイスラエル人青年の姿を追った「ノー・アザー・ランド」は、圧倒的な力による理不尽が映像として目の前に突きつけられ、立ちすくむような気持ちになった。「聖なるイチジクの種」は反政府デモに揺れるイランで、国家公務員の父親が家に置いておいた護身用の銃が消えたことから始まる物語。家族を守るため、というお題目で始まった犯人探しが、父親の独善的な支配にすり替わっていく流れは、完全に独裁国家が国民を支配する姿そのものだった。

 

終戦80年の広島を舞台に、外国人旅行者と広島在住の若者たちが繰り広げるちょっと不思議なSF「惑星ラブソング」。この作品について人に説明すると、「広島が舞台で、原爆のことを描いているのにSF?」「それやっていいの?」といった反応が返ってきて面白かったし、そのことだけでも十分、素晴らしいチャレンジだったと思う。淡い色調で映される現在の広島の街の風景や夜景など、ミニシアター系映画っぽいトーンが、いわゆるヒロシマ映画、原爆映画とは違う印象を与える。主人公と曽祖母が時間を超えて邂逅する場面は、SF/ファンタジーだからこそ描ける真実(リアル)だったと思う。

 

九龍城砦を舞台に大人たちの因縁と若者たちの友情とが絡みあう「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」は、重くなりがちだった今年の映画生活をスカッと爽やかにしてくれた。世代的にはサモハン! そして80年代に愛読していた主に白泉社系の少女漫画――森川久美や青池保子、河惣益巳等々の世界観を思い出すような懐かしさもあり、純粋に楽しめた。

 


+3

特集上映で、未見だった「スターレット」「プリンス・オブ・ブロードウェイ」の2作品を鑑賞。なんてチャーミングな映画たちか! 映画を見た帰り道、「スターレット」の意味を調べたら「小さな星」で、二度泣き。

 

 

公開時から大好きで、何年かに一度はDVDで見直していたが、やはり本作は大画面で見るに限るなと、あらためて実感。「グーグリ、グーグリ」のおまじないや、ロイが語る物語の途中に入り込んでくるアレクサンドリアの「死なせないで」など、久しぶりに劇場で見て、映像よりむしろ声の魅力が印象的だった。

 

 

45周年記念公演とあって、豪華絢爛お祭り騒ぎのトータル4時間。じゅん&さとしのW橋本に早乙女太一の大立ち回り、久々の羽野晶紀と見応えばかり。「芝居」がテーマなだけあって、おふざけと真面目のバランスも絶妙だった。個人的クライマックスは、最上級の褒め言葉として「アホか!」と言いたくなった「髑髏城の七人」オマージュ。そして今後「ムーンライト伝説」のサビは、「未練でござんす」としか口ずさめないだろう。





「高畑勲展」を見に行った麻布台ヒルズにて
「高畑勲展」を見に行った麻布台ヒルズにて

石村加奈のベストテン+3




年の瀬に撮りためたドラマを一気見していたら、「終わりよければすべてよし」と高らかに説く渡辺謙、もといシェイクスピアの声! 3時間を超える長尺映画が目立つなか、蛇足感がもったいない作品も少なくなかったが、まったく時間を感じさせない『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、始まりから終わりまで面白かった。大事な夜に観た『スターレット』は、泣きすぎて放心した帰りの電車を間違えてうっかり急行に乗ってしまい、急行と各駅をアクロバティックに乗り継いで、家で待つ犬のもとへ一刻も早く帰宅していた頃を思いだして、また泣いた。『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』や『私たちが光と想うすべて』は、映画館のおおきなスクリーンでじっくり観るからこその気づきが多い映画だった。眉間の皺やスマホの光、日々の生活のなかで見落としてしまいそうな、ちいさな、でもその人の大事なものがクローズアップされた、美しいシーンが印象的だった。『教皇選挙』も今年、映画館で観るべき醍醐味を堪能した1本だ。かなりくたびれた状態で『旅と日々』を観ている間、まさに旅に出ているような感覚、日常から遠いところへ誘われたような自由を感じた。『スーパーマン』は、今年いちばんハッピーなシチュエーションでたのしんだ映画(クリプト、最高!)。『アジアのユニークな国』の主人公を務めた鄭亜美には、『やわらかい手』のマリアンヌ・フェイスフル(今年1月に亡くなられていたとは……合掌)を彷彿とさせるような魅力があった。ふつうの子どもを取り巻く大人の異様さを淡々と浮き彫りにしていく『ふつうの子ども』は、ラストの校庭の花壇前での子どもたちの表情にグッときた。終戦80年の今年、『リアル・ペイン~心の旅~』の、現代と戦争のつなぎ方に、ジェシー・アイゼンバーグのセンスが光っていた。



+3

ずっと行ってみたかった、なんばグランド花月へ! ボケ続ける剛に苦笑する礼二、なかなか終わらない兄弟の攻防をず〜っと見ていたかった。舞台袖の、中川家と海原やすよ ともこの仲良しなやりとりも生で見られてうれしかった。わなかのたこ焼きもおいしかった。


最終日に駆け込みで。入場の行列に怯んでいたら、余ったからと見知らぬ人に招待券をいただき、ありがたく列に並ぶことに。ノートや写真などの貴重な資料にドキドキした。驚いたのはアニメの『ドラえもん』立ち上げ にも関わっていたこと!


横浜で、古代エジプトのクフ王とピラミッドにまつわるVRエンタテインメント初体験。1時間弱の旅だったが、ガイドの指示通りに移動するだけで精一杯、吉村作治先生(!)監修の説明を聴く余力がないほど、へとへとになってしまった。風や匂いなどが加わったら、より臨場感が増して、旅気分がアップするのではないかと想像がふくらんだ。




 
 
 

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