top of page

私的ベストスポット#1ダラム大聖堂

  • 2 時間前
  • 読了時間: 2分


 ケン・ローチ監督の最新作『オールド・オーク』は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)、『家族を想うとき』(19)に続き、イギリス北東部が舞台。町の具体名はないが2016年、シリア難民が流入した炭鉱の町で唯一のパブが、主人公TJ・バランタイン(デイヴ・ターナー)の細々と営む「オールド・オーク」だ。難民の受け入れで、町の人(主に元炭鉱労働者)たちの憩いの場にも緊張が漂いはじめる。TJはシリアから来たヤラ(エブラ・マリ)と図らずも友情を育んでいくのだが……。

 不穏な空気に呑まれそうになったTJとヤラが訪れるダラム大聖堂。約1000年も昔に建てられた世界遺産に魅了されたヤラは、チャーチチェアに並んで座ったTJと”希望”について率直な言葉を交わす。ヤラの視界がひらけ、1000年後のシリアへと思いを馳せる、美しいシーンだ。そんな彼女に誘われて、久しぶりに教会に足を踏み入れたTJの表情もあかるくなっていく。 


 二人を見ながら、一年前のやわらかい春雨の降る日を思いだしていた。千葉から神奈川へ向かう船の上で、いま、自分のいる場所は人生の通過点に過ぎないのだと肩の力が抜けたことがあった。その旅の目的は温泉だったのだが、雨に濡れた窓から見た、空との境目が曖昧な、優しい海の色をよく憶えている。本作でも、タイトルに掲げられたパブはもちろん、TJが生涯の友(!)・マラと邂逅する海辺なども印象的だった。そういう作品のメイン舞台ではないけれど、私的なベストスポットをこれから時々書いていきたいと思う。


 プレス資料によれば、ダラム大聖堂での撮影はローチ監督86歳の誕生日だったのだとか! 本作の舞台から10年経ったいま、アサド政権は崩壊したが、いまだに帰国できず、多くの人々が避難生活を送っている。シリアに限らず、世界のあちこちで紛争や迫害が起き、分断は深まるばかりだ。作中の登場人物たちが直面する”連帯”の難しさはひとごとではない。それでも監督は「移民は英国人と少しずつ融合している。(略)簡単ではないが努力しなくてはいけない」(2026年4月13日日本経済新聞夕刊)と語る。この春、監督のあたらしい映画と出会えたことを大事にしたい。



原題/The Old Oak 監督/ケン・ローチ 脚本/ポール・ラヴァティ 出演/デイヴ・ターナー、エブラ・マリ、クレア・ロッジャーソンほか 製作年/2023 製作国/イギリス、フランス、ベルギー/英語・アラビア語 カラー113分 配給:ファインフィルムズ 後援/ブリティッシュ・カウンシル 2026年4月24日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開


© Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les



 
 
 

コメント


© 2015 by review103.com 

bottom of page