2015映画ベスト10+3
2015年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。
石村加奈の10+3
(C)松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
1『恋人たち』
2『おみおくりの作法』
4『野火』
5『Mommy/マミー』
6『母と暮せば』
7『花とアリス殺人事件』
9『百日紅』
今年いちばん泣いた映画が『恋人たち』。登場人物たちの、不純物のない感情(タイプは違うが『日本のいちばん長い日』の松坂桃李、『トイレのピエタ』の杉咲花、『ソロモンの偽証』の藤野涼子にも感じた)に圧倒され、しばらく余韻を引きずった。
『おみおくりの作法』の結末はもちろん、駅のスタンドで勧められるままにココアを飲み、ミートパイをかじり、トラックから落ちたアイスクリームをぺろり。積極的に人と関わることで、主人公の人生がどんどんカラフルになっていく。さりげない変化の描写が好きだった。
とてつもない想像力で突っ走った『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。戦いを終えた後、マックスがフュリオサに名乗るシーンまで、カッコよかった。
敗戦から70年となった今年、戦争をモチーフにした映画がたくさん公開されたが、映画は撮りたい画と、想像力、工夫で創るものなのだと、塚田監督のガッツの詰まった『野火』に教わった。南国の鮮やかなグリーンが目に焼きついている。
グザヴィエ・ドランらしい、映画のリズムが心地よかった『Mommy/マミー』。oasisの曲にのせて、自由を叫ぶ一連のシーンが鮮やかだった。
吉永小百合、二宮和也、黒木華、加藤健一、キャスティングの持ち味を上手に引き出した、巨匠・山田洋次監督の職人技に惚れぼれとした『母と暮せば』。
アニメを撮っても、ちゃんと岩井映画だった『花とアリス殺人事件』。貫かれる岩井美学にリスペクト。
お父さんにグッとくることは少ないが、『KANO 1931海の向こうの甲子園』で、寝ている球児たちにそっと布団をかけて回る永瀬正敏の、お父さんの顔はやさしいいい顔だった。
スクリーンいっぱいに、アニメらしい、ダイナミックな画が広がる様が、気持ちよかった『百日紅』。杏の声もきりっとして、お栄にぴったりだった。
シリーズものが多かった今年。『スターウォーズ フォースの覚醒』も楽しかったが、シリーズ5作目となる『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』でも、不可能を可能にするイーサンのワクワク度ったら、やはり無敵なのだ。
+3
『劇場版テレクラキャノンボール2013』
公開年に観ていたら、ベスト3に入っていたと思う。男たちの思惑なんてお構いなしの、女の子たちのしたたかさが痛快だった。
『家族』
1970年製作の山田洋次監督作。仕事で久しぶりに観返して、改めて風見家の人たちへの憧れを強めた。
「金曜ナイトドラマ 池井戸潤原作 民王」
とにかく菅田将暉のうまさに笑った、唸った、すごかった! 金曜日が楽しみでならなかった。
岩根彰子の10+3
(c)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
1『野火』 2『恋人たち』 3『薄氷の殺人』 4『マッドマックス 怒りのデスロード』
5『パレードへようこそ』
6『味園ユニバース』
8『おみおくりの作法』
9『駆け込み女と駆け出し男』
10『幕が上がる』
邦画が豊作でうれしい年だった。Top3は甲乙つけがたく好きな3本。どれもテーマ的には陰鬱といっていいのに、映画としては抜群に面白く、色気があった。それぞれ悶えた場面は、
『野火』:中村達也演じる伍長の最後の一言「ここ、食べていいよ」。近年稀に見る色気にしびれた。
『恋人たち』:瞳子が見せる少女漫画の原稿。他人事でなく痛かった。
『薄氷の殺人』:観覧車の翌朝のヒロインの豹変ぶり。それはさすがに……と冷や汗が。
『マッドマックス 怒りのデスロード』は、大好きな『欲望のバージニア』ラインのトム・ハーディでお腹いっぱい。妊婦がお腹を盾にするシーンも忘れられない。
にぎやかなパレードに加わりながら、静かに自分の歩みを進めるビルナイの佇まいがじんわり染みた『パレードへようこそ』。ドラマ『SHEROCK/シャーロック』のモリアーティことアンドリュー・スコットの潤んだ垂れ目にもキュン。
レイとフィンが掛け合いしながら走りまわるシーンに、ルークとソロとレイアの若き日の姿が重なり涙腺が緩んだ『スターウォーズ フォースの覚醒』。自分の大好きな本が、それを心底楽しんでくれる若い人にもらってもらえたような嬉しさだった。
「あっのっころは〜」の歌い出しだけで100万点の 『味園ユニバース』。渋谷すばるのふてぶてしい顔つきでさらに100万点。二階堂ふみにこき使われる赤犬の面々から漂う薄桃色の幸せオーラも愛らしかった。
あるかもしれない、と、思いたい。そんな結末の物語が好きなのだが、『おみおくりの作法』のラストシーンはまさにそれだった。物語ってこういうことのためにあると思う。
『駆け込み女と駆け出し男』は、見終えてしみじみと心地よい、滋味溢れる映画。画面の美しさが特に印象的だった。大泉洋力は「水曜どうでしょう」と並ぶほど存分に発揮されていたし、満島ひかりの着物の着こなしも素晴らしくて敵わない。
こちらも百田夏菜子力、そして黒木華力にやられた『幕が上がる』。特に黒木華演じる顧問の先生の、自分が先へ進むために捨てるものは捨てて言い訳しない潔さが最高に男前。
+3
『オープニング・ナイト』
それまで大切にしてきた若い娘の幻想を、自分が乗っ取られそうになったところでボコボコに殴りたおすジーナ・ローランズに惚れて、その一点のみで好きだった本作。リバイバルで20数年ぶりに見たら、びっくりするくらいヒロイン周りの人々のことが分かってしまって、あらためてカサヴェテスの凄さを認識。そして、年とるって悪くないなぁ、と。
『ショート・ターム』
昨年の公開時にはまったくノーマークだったので、あまりの良さに驚いた一作。語り過ぎない語り口が好み。物語のテーマをくるりと包むようなオープニングとラストシーンの円環構造も巧かった。ホールデンからキャッチャーになった人たちの話だ、と思った。
『掟上今日子の備忘録』
思わぬ拾いもの、という意味での一作。設定としては『50回目のファーストキス』の踏襲だが、そこに「探偵」という仕事をうまく絡め、さらにとてもストレートな恋愛ドラマとして魅力的に仕上げていた。脚本の野木亜紀子さん(ドラマ『空飛ぶ広報室』も脚本作りが巧いと思った)の名前を覚えておこう。ガッキーの可愛さは『マイ ボス マイ ヒーロー』以来の純度100%。