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主人公の、観客の、人生に寄りそう犬映画

  • ISHIMURA,Kana
  • 2016年4月1日
  • 読了時間: 4分

映画『ミラクル・ニール!』をめぐって

 Twitterの自己紹介でも、犬好きを公言している先輩ライターのTさん、Twitterでは僅差で猫派を語るSさんと、大久保で春の肉食会。春休み映画『ミラクル・ニール!』の話から、犬好きのTさんに、好きな犬映画を聞いてみると『人生はビギナーズ』(10)と『過去のない男』(02)を即答。『過去〜』に限らず、カウリスマキ映画に出てくる犬は、みんな好きなのだとか。流れ着いたヘルシンキで暴漢に襲われ、過去を失くした『過去〜』の主人公(マルック・ペルトラ)は、コンテナを借りた悪徳警官がいやがらせで置き去りにした犬・ハンニバル(=食人鬼)となかよく暮らす中で、人生を前向きに歩んでいく。ハンニバルは、カウリスマキのオフビートな世界観がよく似合うスマートな犬だ(男がイルマ(カティ・オウティネン)とデートするときには、そっと外に出ていく気配りまでできるほど)。

『人生はビギナーズ』に登場するアーサーは、母の死後、75歳でゲイであることを告白し、その後の人生を謳歌した、オリヴァー(ユアン・マクレガー)の父ハル(クリストファー・プラマー)の犬。父の死後、オリヴァーが引き取った、このジャック・ラッセル・テリアは、人間と会話ができる。奥手なオリヴァーに「この(女の子を好きな)気持ちが続くといいね」なんて、素敵なことをさらっと言ってくれる、よき友に背中を押されて、オリヴァーとフランス人女優アナ(メラニー・ロラン)との不器用な恋の行方が綴られていく。マイク・ミルズ監督が、自身の父親との関係を基に作った映画だ。

 猫派のSさんがあげたのは、アメリカの作家、ウィリー・モリスの自伝小説を基にした『マイ・ドッグ・スキップ』(00)。いじめられっ子の主人公ウィリーの9歳の誕生日に、両親から贈られたテリアのスキップ。ひとりぼっちのウィリーに、フットボールを教え、仲間を作り、リバースとの恋だって応援しちゃう、勇気と知恵のある犬だ。ウィリーの頼もしい相棒として、スキップはいつも、少年、若者へと成長していくウィリーの隣にいた。やがて大学進学のため、家を離れるウィリーを乗せたバスをずっと見送っているスキップの、ちっちゃい背中とさびしそうな表情は何度観返しても、号泣してしまう。退役軍人の過去を持つ、ウィリーの父役、ケビン・ベーコンの演技もさりげなくていい。Sさんって、実は犬派なのでは? という疑問もチラリ。

 フレンチブルドッグと暮らして12年、10kgの犬を膝に抱えるなんてなんのその、いまや腕に顎を乗せられた状態で爆睡されても、平気で原稿を書ける私が思い浮かべたのは『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(85)。主人公イングマル(アントン・グランセリウス)は、シッカンというテリア(テリアって本当に賢い犬種なんだなぁ!)を飼っていたが、母親の病気が悪化して、親戚の家をたらい回しに。「人工衛星で死んだライカ犬より、僕の人生の方がまだマシだ」と自分に言い聞かせながら、明るく過ごしていたイングマルだったが、離ればなれになったシッカンの死を知らされたとき、それまで我慢していた不安や悲しみがあふれ出す。「僕はシッカンに言いたかった、僕が殺したんじゃない」と泣きじゃくる、幼い少年の混じり気のない悲しみは、大人になるほど圧倒される。ラッセ・ハルストレム監督は『ハチ公物語』(97)をリメイクした『HACHI 約束の犬』(09)も映画化。犬が可哀想過ぎる展開の多い、日本の犬映画とは違うアプローチが新鮮だった。

 そして冒頭の新作犬映画『ミラクル・ニール!』。地球破壊をもくろむ宇宙人の気まぐれで、ミラクル・パワーを授かった、主人公・ニール(サイモン・ペッグ)。「愛犬とお喋りしたい!」という願いが叶うも、人間ほど願望のない愛犬デニスは「ビスケット!」しか喋らない。それに引き換え、煩悩だらけのニールにミラクル・パワーを使いこなせるはずはなく、ニールを取り巻く事態はどんどん紛糾していき……果たして宇宙人から地球を守れるのか? 人間より賢い犬デニスの声を務めたのは、名コメディアンの故ロビン・ウィリアムス。ロビンは、デニスを16歳の男の子と想定して、役を演じていたらしい。たしかに16歳の無邪気さと知性をあわせ持った、いい声だ。ちなみに本作、犬映画ではなく、SFコメディというジャンルにカテゴライズされている!?

 さらにTさんとS さんが声を合わせて言うことには、ブリー・ラーソンが本年度アカデミー賞主演女優賞を受賞した『ルーム ROOM』(15)でも、少年ジャックの人生の要所要所で、犬が印象的に登場するらしい。こちらの公開は4月8日から。今年も“ワン”ダフルな映画がたくさん観られますように。

『ミラクル・ニール!』

原題/ABSOLUTELY ANYTHING

監督・製作・脚本/テリー・ジョーンズ

脚本/ギャビン・スコット

出演/サイモン・ペッグ、ケイト・ベッキンセール、モンティ・パイソン(声の出演)、ロビン・ウィリアムス(声の出演)ほか

配給/シンカ

製作年/2015年 

製作国/イギリス カラー85分

2016年4月2日(土)から渋谷シネクイントにて先行公開、4月9日(土)より新宿バルト9ほか全国公開

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2件のコメント


adien first
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