記憶色の映画たち

映画『マリアンヌ』より

 昨年末、ある映画の撮影監督に取材した時「記憶色」というキーワードに、膝を打った。生っぽさにこだわった、ドキュメンタリーチックな映像を、グレーディング作業で、こってりと煮詰めた色味に仕上げたことで、ラッシュ時より、たいそう美しく感じたのだ。いわく「記憶というものは、映像(=イメージ)を濃密にする」と。たしかにいつか見た、大きな夕日や海の色は、本来よりも少し濃く、いとしいものになっている。

第二次世界大戦下での、壮大なラブ・ロマンスを描いた『マリアンヌ』冒頭の、マックス(ブラッド・ピット)とマリアンヌ(マリオン・コティヤール)が出会い、恋に落ちるシーン。カサブランカのエキゾチックな街並みや、空の青色とのコントラストが幻想的なサハラ砂漠の映像に、例えば『カサブランカ』(42)や『バクダッド・カフェ』(87)といった名画、あるいは『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)や『ジョー・ブラックによろしく』(98)など、ブラピの美貌が際立つ過去作が、脳裏に浮かんでいた。観る者の記憶を刺激する映像は、言葉や視線が複雑に絡み合う、愛のミステリーに、ロバート・ゼメキス監督が張りめぐらせた、細やかな伏線のひとつとして、大いに効いている(クライマックスシーンで、マリアンヌを見つめるマックスの、揺らぐカメラワークも面白かった)。

夢追い人の街L.A.を舞台にした、ミュージカル映画『LA LA LAND』の、クラシカルでフレッシュな映像美は、まさに夢のようだ。撮影監督のリヌス・サンドグレンは、アナモルフィック・レンズと35ミリフィルムを使って、ステディカムで撮影する、新旧織り交ぜた方法で、撮影に臨んだらしい(シネマスコープサイズは、昔ながらの2.25対1)。女優になる夢を抱き、田舎町からやってきたミア(エマ・ストーン)の目に映るカラフルなロサンゼルスと、自分の店を持つためにステップアップを図るセブ(ライアン・ゴズリング)の冷徹な眼差しが見据えた現実との、映像のギャップもユニーク。それぞれの夢に没頭した二人が、最後の一瞬、甘い記憶に思いを馳せる(いささかクレイジーな)夢物語は、新しい人生賛歌だ。満天の星空の下で踊る二人のシーンと同じくらい、忘れられない輝きに満ちあふれていた。

 川上弘美は「記憶」というエッセイに「きれいと思う心は、いつもなにがしかの思いと結びついている」と書いていた。いつか、このきれいな映画たちを思い出す時、どういうふうに映るのだろうか。

『マリアンヌ』

原題/[Allied]

監督/ロバート・ゼメキス 撮影/ドン・バージェス

出演/ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリスほか

製作年/2016年 製作国/アメリカ、イギリス

2月10日(金)日本公開開始

カラー124分 配給/東和ピクチャーズ

Marianne-movie.jp

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『LA LA LAND』

原題/LA LA LAND

監督・脚本/デイミアン・チャゼル

撮影/リヌス・サンドグレン

出演/ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、J.K.シモンズほか

製作年/2016年 製作国/アメリカ

2月24日(金)日本公開開始

カラー128分 配給/ギャガ、ポニーキャニオン

gaga.ne.jp/lalaland

© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

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