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2016映画ベスト10+3

2016年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。

岩根彰子の10+3

© 2016「団地」製作委員会

1 『団地

6 『二重生活

7 『永い言い訳

9 『ルーム

 昨年に引き続き、浮き足立ってしまうほど邦画が豊作だった2016年。監督・阪本順治、主演・藤山直美と岸部一徳、そしてタイトルという事前情報から予想していた物語とはまったく別方向へドライブしていく『団地』には、気持よく一本取られた気分だった。あのラストカットに心を揺さぶられた感覚は、きっと生涯忘れられない。ちなみに年明け1月7日(土)~1月13日(金)まで渋谷アップリンク【見逃した映画特集2016】で再上映が決定。また1月6日(金)にはブルーレイ&DVDも発売されるので、見逃した方はぜひとも。

 主人公が同い年ということもあって、思い入れが深くならざるをえない『シング・ストリート 未来へのうた』。iPodだけが味方のように感じながら街を歩くときの気分を、映画として昇華してもらえたような気がした。

 偶然、同じ日に見た『ディストラクション・ベイビーズ』と『この世界の片隅に』は、71年を隔てた瀬戸内海の変わらない穏やかさと、そこに存在する“暴力”の質の大きな変化が印象的だった。

 テンポのよさ、巨災対メンバーのチーム感、そしてなにより暴れるゴジラの格好よさ。純粋に映画の楽しさに満ちていた『シン・ゴジラ』。

 見られることの不気味さや不快を超えた先にある不思議な安心感と、反対に見る側の空虚さにのみ支えられた実在感の対比が見事だった『二重生活』。誰かの視線があってはじめて存在する時間があることを象徴する、ゴミ捨て場を映す監視カメラの映像の使い方も巧かった。

 人間の感情をひとつひとつ切り開いて明らかにしていく。そんな西川美和監督の外科医的な視線に、少し本能的なゆらぎがプラスされたような感触がした『永い言い訳』。作品そのものと同じくらい、ポスタービジュアルも素晴らしい。

 フランスの団地を舞台にした『アスファルト』には、他人同士がひとときふれあうことの面白さと、それが人生にとって不可欠な栄養素だということを、あらためて噛みしめさせられた。

 終始、息子視点で綴られた原作が素晴らしかった『ルーム』。映画で母子を演じたブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイのコンビが原作のイメージそのままで、見事な説得力だった。本当の意味で「世界」が描かれていた。

 『ローグ・ワン』は、ご多分に漏れずラストの設計図データリレーに号泣。

+3

噂に違わぬ迷作だったが、愛嬌たっぷりで大好きな一作になってしまった。『団地』にも通じる、現実と異世界との境界線の引き方の変なバランスが好み。見た人同士、「クー」と「キュー」で話したい。

「午前十時の映画祭」で見逃してからずっと気になっていた一作。これもまた生涯ベストテンに入れたくなるような、少し不思議な手触りの愛らしい作品だった。探偵役のトポルがたまらなくキュート。彼の役名「クリストフォルー」の響きが妙にツボに入ってしまって、ときどき口に出したくなる。

昨年のこの記事で、『掟上今日子の事件簿』を取り上げて「脚本の野木亜紀子さんの名前を覚えておこう」と書いていた自分をちょっと自慢したいほどの大ブームになった『逃げるは恥だが役に立つ』(もちろんこれも傑作だった!)に続く23時台にBSプレミアムで放送されていた『プリンセスメゾン』。どちらも「社会のなかで女がどう生きていくか」というテーマを堅苦しくなく、けれど真剣に描いた作品で、2作を続けて観るのが秋クールの火曜の楽しみだった。ある人が本作について「空気を描こうとしたドラマだったのかな」と言っていて、まさに! と納得。

石村加奈の10+3

3『聲の形

6『キャロル

8『二重生活

個人的に年を取った感が強かった2016年らしく、観ていて、ワクワクした作品ばかりが思い出される。80年代の音楽もキラキラしていた『シング・ストリート 未来へのうた』は、カメラワークも好きだった。街角でラフィーナを見つけるコナー、玄関先でくつろぐ母親の背中を見つめる、成長した兄弟……作中で交錯する眼差しが優しく、愛おしい。『レヴェナント:蘇りし者』のエマニュエル・ルベツキの、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とは打って変わって、ドキュメンタリーのようなハードな画にも心奪われた。『二重生活』の夏海光造のスリリングなカメラワークにも、ドキドキした。

アニメでしか表現できない世界観に引きずり込まれた『聲の形』。The Whoの「My Generation」からはじまり、バッハの「インベンション」「怪獣のバラード」ほか劇中音楽にもグッときた。

『シン・ゴジラ』は、東日本大震災を経ていま、日本で、ゴジラ映画を撮る意志(大河ドラマ「真田丸」にも通じる、テーマの説得力)がみなぎっていた。宮沢賢治の詩やおにぎりなどの使い方も冴えていた。イエジー・スコリモフスキの『イレブン・ミニッツ』は、登場する犬もすばらしかった。

こぢんまりした団地を舞台に、宇宙規模(!)のストーリーが展開されていく『アスファルト』。こういう作品を選ぶ、イザベル・ユペール、なんてカッコよいんだろう! ケイト・ブランシェットの美貌にため息が出た『キャロル』は、こってりと映画らしい映画で、現実に戻ってしまうのがもったいない気持ちになった。

『溺れるナイフ』は、山戸結希監督と小松菜奈のガールズ・パワーが炸裂した、今年最強のガールズ・ムービー(菅田将暉も美しかった)。

『モヒカン故郷に帰る』の永吉(松田龍平)率いる田村家のパンク精神は、実に清々しく、故郷の瀬戸内海をちょっと思い出したりもして。

+3

『シング・ストリート〜』も80年代が舞台だったが、本作も83年に公開された、大島渚監督作。数年ぶりに観返したら、そのみずみずしい世界観に圧倒された。本作についてちょこっとお手伝いした、デヴィッド・ボウイ大回顧展「DAVID BOWIE is」は、2017年1月8日から寺田倉庫G1ビル(天王洲)にて開催。

NHK大河ドラマ「真田丸

ドラマ豊作の今年、1本選ぶなら……迷った末に、時代の雰囲気を巧みに反映した本作を。「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「ゆとりですがなにか」「逃げるは恥だが役に立つ」も好きだった。

るつぼ

舞台で少女たちと一緒に踊る黒木華さんの、華やかさが目に焼きついて離れない。闇の中で、赤が効いた舞台美術も美しかった。

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