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私的逸曲#2<br>「ジムノペティ 第一番」

「ジムノペティ 第一番」作曲/エリック・サティ

映画『ロスト・イン・パリ』より

 さまざまな映画で使われてきた、サティの代表曲「ジムノペティ 第一番」。本作では、エッフェル塔でのクライマックスシーンで、ドラマチックに映画を盛り上げる。

 カナダの雪深い村に住むフィオナは、パリに暮らす、マーサおばさんからの手紙を受け取り、勇気凛々フランスへと旅立つ。未知なる大都会パリで、さまざまなトラブルに見舞われながらも、風変わりなホームレスのドムをはじめ、いろいろな人々と出会う中、行方不明となった叔母を探すフィオナの、ひと夏、というにはささやかな冒険が、ビビッドに描かれていく。

 主人公フィオナとドムを演じ、本作の製作、監督、脚本を務めたのは“ジャック・タチの後継者”といわれる、道化師カップルのドミニク・アベル&フィオナ・ゴードン。セリフに頼らず、道化師ならではの力強い身体表現を用いた本作は、バーレスクコメディ(踊りを主にした、おどけ芝居)と呼ばれ、刺激的なエナジーに満ちみちている。

 例えば、冒頭の手紙が届けられるシーンでは、ドアを開けた途端、室内に舞い込んでくる吹雪に激しく煽られるフィオナのダイナミックな動きに、彼女のデリケートな性格がよく表れている。また、セリフの少ない分、ドムのよき相棒、野良犬の存在感がアップしているような、愉快な錯覚もあり!?

 ただ楽しいだけでは終わらないのも、本作の素敵なところだ。暴走するトムの弔辞をはじめ、言葉の無意味さをそこここに漂わせる中、「ジムノペティ」をBGMに、パリを見渡す大舞台で、何十年ぶりに再会したフィオナたちに、マーサのつぶやくひと言の迫力ったら! ゆったりとシンプルなメロディ(本作の作風にぴったりだ)が、マーサの年齢にたどりつかないことには語れない、人生のロマンをしっとりと匂わせる。奇しくもマーサを演じたエマニュエル・リヴァの遺作となった本作。ベンチのシーンで、ピエール・リシャール扮するかつての恋人ノーマンと披露する「フットダンス」も、若き日の二人を彷彿とさせる、幸せなワンシーンになっている。軽やかだが、深い余韻の残る、優雅な夏の映画だ。

『ロスト・イン・パリ』

原題/Paris Pieds Nus 

監督、脚本、製作/ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン

出演/フィオナ・ゴードン、ドミニク・アベル、エマニュエル・リヴァ、ピエール・リシャール、フィリップ・マルツ

8月5日より、ユーロスペースほかにて公開

製作年/2016年 製作国/フランス、ベルギー カラー83分 配給/サンリス 

©Courage mon amour-Moteur s'il vous plaît-CG Cinéma

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