

2017映画ベスト10+3
2017年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 石村加奈の10+3 1 タレンタイム〜優しい歌 2 わたしは、ダニエル・ブレイク 3 パターソン 4 オン・ザ・ミルキーロード 5 マンチェスター・バイ・ザ・シー 6 ダンケルク 7 メッセージ...


私的名台詞#7「親って複雑なんだよ」
映画『かぞくへ』 人が信用できないのは、たぶん臆病だから。相手が怖いのは、自分の安全な居場所がまだ見つけられていないから。家族神話が崩壊し、近頃の日本映画では、若き主人公たちのまわりに、親の気配はおろか、親不在の設定が目立つ。しかし人というのはやはり、誰かに自分の存在を許してほしいと願っている。本作『かぞくへ』を観て、そう肌身で感じた。 佳織(遠藤祐美)との結婚を控えた旭(松浦慎一郎)は、自分の紹介した仕事で、同じ養護施設で育った洋人(梅田誠弘)を詐欺被害に遭わせてしまう。旧友の窮状を見過ごせない旭は、佳織に内緒で、結婚資金を洋人に渡す。佳織との小さな亀裂は徐々に大きくなってゆく。すれ違う中で佳織が旭に投げつけた「親って複雑なんだよ」という言葉は「親ってそういうもんなの!」と続く。親や家族を知らずに育った旭は、ひどく寂しそうな表情を残して、佳織の元を逃げ去っていく。 旭も佳織も洋人も、自分のことより相手を優先する、やさしい人たちだ。佳織が、実家のきつい事情を旭に言えず、ひとりで抱えているのも然り。大事な人のために、自分にできることを精


私的逸曲#2「ジムノペティ 第一番」
「ジムノペティ 第一番」作曲/エリック・サティ 映画『ロスト・イン・パリ』より さまざまな映画で使われてきた、サティの代表曲「ジムノペティ 第一番」。本作では、エッフェル塔でのクライマックスシーンで、ドラマチックに映画を盛り上げる。 カナダの雪深い村に住むフィオナは、パリに暮らす、マーサおばさんからの手紙を受け取り、勇気凛々フランスへと旅立つ。未知なる大都会パリで、さまざまなトラブルに見舞われながらも、風変わりなホームレスのドムをはじめ、いろいろな人々と出会う中、行方不明となった叔母を探すフィオナの、ひと夏、というにはささやかな冒険が、ビビッドに描かれていく。 主人公フィオナとドムを演じ、本作の製作、監督、脚本を務めたのは“ジャック・タチの後継者”といわれる、道化師カップルのドミニク・アベル&フィオナ・ゴードン。セリフに頼らず、道化師ならではの力強い身体表現を用いた本作は、バーレスクコメディ(踊りを主にした、おどけ芝居)と呼ばれ、刺激的なエナジーに満ちみちている。 例えば、冒頭の手紙が届けられるシーンでは、ドアを開けた途端


穴に落ちる、川を泳ぐ
映画『空(カラ)の味』 不幸ではないことと、幸せであることはイコールじゃない。けれども不幸ではないのに幸せを感じられないと、うしろめたさを覚えてしまう。 この物語の主人公、聡子(堀春菜)もそんな人間の1人だ。 両親と兄のいるおだやかな家庭があり、部活で汗を流し、友達とおしゃ...


不器用な人にやさしい、青色の都会
『映画 夜空は最高密度の青色だ』 4月の電車の中には、上京して間もない人たちの初々しさが漂っていて、懐かしい気持ちになる。聞きしに勝る朝の満員電車の恐怖や、乗り換えの難しさ(昔ほど大変ではないだろうけど)を、東京で新しく出会った人たちと、方言交じりでにぎやかに話す様子は微笑...


記憶色の映画たち
映画『マリアンヌ』より 昨年末、ある映画の撮影監督に取材した時「記憶色」というキーワードに、膝を打った。生っぽさにこだわった、ドキュメンタリーチックな映像を、グレーディング作業で、こってりと煮詰めた色味に仕上げたことで、ラッシュ時より、たいそう美しく感じたのだ。いわく「記憶...


2016映画ベスト10+3
2016年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 岩根彰子の10+3 © 2016「団地」製作委員会 1 『団地』 2 『シング・ストリート 未来へのうた』 3 『ディストラクション・ベイビーズ』 4 『この世界の片隅に』 5 『シン・ゴジラ』...


私的名台詞#6「いいことだけ考えて。悪いことは言わないの!」
映画『人生フルーツ』 是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』、阪本順治監督の『団地』と、団地を舞台にした日本映画が印象に残った2016年。建築家・藤森照信氏の言葉を借りれば「(日本の)ダンチの性格を変えた」建築家が、本ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』の主人公・津端修一さん(90)だ。 修一さんは、妻の英子(87)さんと、自らがプロジェクトに関わった、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン内に暮らしている。とはいえ団地に住んでいるのではなく、タウン内の一角に木造平屋建ての家を建て、雑木や果樹を植え、畑を耕して、生活している。キッチンガーデンで育てられた70種の野菜と50種の果実(「百姓、百種」が英子さんの目標だったのだとか)は、お料理も上手な英子さんの手にかかると、ジャムやケーキ、ソースなどのごちそうに変わる(四季折々の食材を使ったお料理も、フルーツのように美しく、観る者の食欲をそそる)。修一さんもベーコンを作ったり、餅つきの日には満艦飾を掲げて、孫の名前の焼き印を入れるところまで楽しむという、憧れのスローライフだ。修一さんの著書『自由時間新


ディテールのおいしい映画
映画『バースデーカード』 誕生日には毎年、10歳で天国に行った母親(宮崎あおい)からバースデーカードが届く、のんちゃんこと本作のヒロイン・紀子(橋本愛)。生前に、娘の成長を想像して、学校をサボって映画館へ行くことを勧めたり、キスの手ほどきをしたり、と趣向を凝らし、書きためた...


想像力の穴と海〜秋の新作7本に寄せて〜
映画「湯を沸かすほどの熱い愛」より ハイカロリーな名演に圧倒された余韻はあるのに、気持ちがさっぱりしない。力作そろい踏みの今秋公開映画鑑賞後、そんな状態が続いていた。悶々としていたとき、東京新聞のインタビュー記事にハッとした。...
