私的名台詞#7<br>「親って複雑なんだよ」
映画『かぞくへ』 人が信用できないのは、たぶん臆病だから。相手が怖いのは、自分の安全な居場所がまだ見つけられていないから。家族神話が崩壊し、近頃の日本映画では、若き主人公たちのまわりに、親の気配はおろか、親不在の設定が目立つ。しかし人というのはやはり、誰かに自分の存在を許し...
私的逸曲#2<br>「ジムノペティ 第一番」
「ジムノペティ 第一番」作曲/エリック・サティ 映画『ロスト・イン・パリ』より さまざまな映画で使われてきた、サティの代表曲「ジムノペティ 第一番」。本作では、エッフェル塔でのクライマックスシーンで、ドラマチックに映画を盛り上げる。...
穴に落ちる、川を泳ぐ
映画『空(カラ)の味』 不幸ではないことと、幸せであることはイコールじゃない。けれども不幸ではないのに幸せを感じられないと、うしろめたさを覚えてしまう。 この物語の主人公、聡子(堀春菜)もそんな人間の1人だ。 両親と兄のいるおだやかな家庭があり、部活で汗を流し、友達とおしゃ...
不器用な人にやさしい、青色の都会
『映画 夜空は最高密度の青色だ』 4月の電車の中には、上京して間もない人たちの初々しさが漂っていて、懐かしい気持ちになる。聞きしに勝る朝の満員電車の恐怖や、乗り換えの難しさ(昔ほど大変ではないだろうけど)を、東京で新しく出会った人たちと、方言交じりでにぎやかに話す様子は微笑...
記憶色の映画たち
映画『マリアンヌ』より 昨年末、ある映画の撮影監督に取材した時「記憶色」というキーワードに、膝を打った。生っぽさにこだわった、ドキュメンタリーチックな映像を、グレーディング作業で、こってりと煮詰めた色味に仕上げたことで、ラッシュ時より、たいそう美しく感じたのだ。いわく「記憶...
2016映画ベスト10+3
2016年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 岩根彰子の10+3 © 2016「団地」製作委員会 1 『団地』 2 『シング・ストリート 未来へのうた』 3 『ディストラクション・ベイビーズ』 4 『この世界の片隅に』 5 『シン・ゴジラ』...
私的名台詞#6<br>「いいことだけ考えて。悪いことは言わないの!」
映画『人生フルーツ』 是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』、阪本順治監督の『団地』と、団地を舞台にした日本映画が印象に残った2016年。建築家・藤森照信氏の言葉を借りれば「(日本の)ダンチの性格を変えた」建築家が、本ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』の主人公・津端修一さん(...
ディテールのおいしい映画
映画『バースデーカード』 誕生日には毎年、10歳で天国に行った母親(宮崎あおい)からバースデーカードが届く、のんちゃんこと本作のヒロイン・紀子(橋本愛)。生前に、娘の成長を想像して、学校をサボって映画館へ行くことを勧めたり、キスの手ほどきをしたり、と趣向を凝らし、書きためた...
想像力の穴と海〜秋の新作7本に寄せて〜
映画「湯を沸かすほどの熱い愛」より ハイカロリーな名演に圧倒された余韻はあるのに、気持ちがさっぱりしない。力作そろい踏みの今秋公開映画鑑賞後、そんな状態が続いていた。悶々としていたとき、東京新聞のインタビュー記事にハッとした。...
私的逸曲#1<br>「今夜はブギー・バッグ」
「今夜はブギー・バッグ」(1994) 作詞・作曲・編曲/小沢健二、光嶋誠、松本真介、松本洋介 映画『オオカミ少女と黒王子』より 風邪で学校を休んだ、オレ様王子こと恭也(山崎賢人)の見舞いに行ったヒロイン・エリカ(二階堂ふみ)が、ぎこちなくもかいがいしく世話を焼き、恐らくまだ...