

不器用な人にやさしい、青色の都会
『映画 夜空は最高密度の青色だ』 4月の電車の中には、上京して間もない人たちの初々しさが漂っていて、懐かしい気持ちになる。聞きしに勝る朝の満員電車の恐怖や、乗り換えの難しさ(昔ほど大変ではないだろうけど)を、東京で新しく出会った人たちと、方言交じりでにぎやかに話す様子は微笑...


記憶色の映画たち
映画『マリアンヌ』より 昨年末、ある映画の撮影監督に取材した時「記憶色」というキーワードに、膝を打った。生っぽさにこだわった、ドキュメンタリーチックな映像を、グレーディング作業で、こってりと煮詰めた色味に仕上げたことで、ラッシュ時より、たいそう美しく感じたのだ。いわく「記憶...


2016映画ベスト10+3
2016年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 岩根彰子の10+3 © 2016「団地」製作委員会 1 『団地』 2 『シング・ストリート 未来へのうた』 3 『ディストラクション・ベイビーズ』 4 『この世界の片隅に』 5 『シン・ゴジラ』...


私的名台詞#6<br>「いいことだけ考えて。悪いことは言わないの!」
映画『人生フルーツ』 是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』、阪本順治監督の『団地』と、団地を舞台にした日本映画が印象に残った2016年。建築家・藤森照信氏の言葉を借りれば「(日本の)ダンチの性格を変えた」建築家が、本ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』の主人公・津端修一さん(...


ディテールのおいしい映画
映画『バースデーカード』 誕生日には毎年、10歳で天国に行った母親(宮崎あおい)からバースデーカードが届く、のんちゃんこと本作のヒロイン・紀子(橋本愛)。生前に、娘の成長を想像して、学校をサボって映画館へ行くことを勧めたり、キスの手ほどきをしたり、と趣向を凝らし、書きためた...


想像力の穴と海〜秋の新作7本に寄せて〜
映画「湯を沸かすほどの熱い愛」より ハイカロリーな名演に圧倒された余韻はあるのに、気持ちがさっぱりしない。力作そろい踏みの今秋公開映画鑑賞後、そんな状態が続いていた。悶々としていたとき、東京新聞のインタビュー記事にハッとした。...


私的逸曲#1<br>「今夜はブギー・バッグ」
「今夜はブギー・バッグ」(1994) 作詞・作曲・編曲/小沢健二、光嶋誠、松本真介、松本洋介 映画『オオカミ少女と黒王子』より 風邪で学校を休んだ、オレ様王子こと恭也(山崎賢人)の見舞いに行ったヒロイン・エリカ(二階堂ふみ)が、ぎこちなくもかいがいしく世話を焼き、恐らくまだ...


新世界★ドローンウォーズ
舞台「来てけつかるべき新世界」 久しぶりに声をあげて大笑いした。 冒頭の「やっぱり(CD)盤がないとなぁ」でくすぐられ、串カツの二度づけ禁止に一石を投じる「うずら理論」で完全にスイッチオン。そこから繰り広げられるドローンvsおっさん、野良ロボットvsおっさん、人工知能v...

私的名台詞#5<br>「私はきっとろくでもない大人になる」
夏休みドラマ「キッドナップ・ツアー」 NHK公式ホームページより 夏休みの初日に、小学五年生のハル(豊嶋花)は、別居中の父親(妻夫木聡)に誘拐される。だらしなくて、情けなくて、お金もない父とのひと夏の旅で、少女は、それまで知らなかった父親の姿を知る。...


サンディエゴの青年に抱く、ふしぎな当事者感
映画『ヒップスター』 ふしぎな肌ざわりの映画だ。原題は真逆の「I AM NOT A HIPSTER 」(“HIPSTER”とは、流行に敏感な人を指すスラング)。たしかに本作の主人公、ブルック・ハイド(ドミニク・ボガート)は、流行に関心はなさそうだ。ライブシーンから始まる本作...