

私的名台詞#8「恋愛は科学じゃない」
映画『タイニー・ファニチャー』 自尊心や感受性ばかり強いくせに、大事なものがまだ自分の中心になくて、自分の中で基準もないような、足もとがぐらつく時期がある。当時の自分がどれくらい無力でバカだったか、いやというほど知っているからこそ、その渦中でもがいている人を見るのは、正直し...


「あのね」でつながる物語
公式ホームページより ドラマ「anone」 坂元裕二の新作ドラマのタイトルが『anone』だと知って、真っ先に思い浮かべたのは『一年一組せんせいあのね』という本のことだった。1981年に出版されたこの本は、小学1年生の子どもたちが「あのねちょう」という名前のノートに書いた文...


母としての覚悟、さらに
2017年の映画館の思い出と言えば、『女神の見えざる手』だ。レディースディでもないのに、女性客がひしめく劇場。タフなヒロインの胸をすくような活躍を堪能して劇場を後にする彼女たちの、元気の湧く様子。強いヒロインの映画を観ていると、活力に満ちていくのが自分でもわかる。今回は2月...


2017映画ベスト10+3
2017年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 石村加奈の10+3 1 タレンタイム〜優しい歌 2 わたしは、ダニエル・ブレイク 3 パターソン 4 オン・ザ・ミルキーロード 5 マンチェスター・バイ・ザ・シー 6 ダンケルク 7 メッセージ...


私的名台詞#7「親って複雑なんだよ」
映画『かぞくへ』 人が信用できないのは、たぶん臆病だから。相手が怖いのは、自分の安全な居場所がまだ見つけられていないから。家族神話が崩壊し、近頃の日本映画では、若き主人公たちのまわりに、親の気配はおろか、親不在の設定が目立つ。しかし人というのはやはり、誰かに自分の存在を許してほしいと願っている。本作『かぞくへ』を観て、そう肌身で感じた。 佳織(遠藤祐美)との結婚を控えた旭(松浦慎一郎)は、自分の紹介した仕事で、同じ養護施設で育った洋人(梅田誠弘)を詐欺被害に遭わせてしまう。旧友の窮状を見過ごせない旭は、佳織に内緒で、結婚資金を洋人に渡す。佳織との小さな亀裂は徐々に大きくなってゆく。すれ違う中で佳織が旭に投げつけた「親って複雑なんだよ」という言葉は「親ってそういうもんなの!」と続く。親や家族を知らずに育った旭は、ひどく寂しそうな表情を残して、佳織の元を逃げ去っていく。 旭も佳織も洋人も、自分のことより相手を優先する、やさしい人たちだ。佳織が、実家のきつい事情を旭に言えず、ひとりで抱えているのも然り。大事な人のために、自分にできることを精


私的逸曲#2「ジムノペティ 第一番」
「ジムノペティ 第一番」作曲/エリック・サティ 映画『ロスト・イン・パリ』より さまざまな映画で使われてきた、サティの代表曲「ジムノペティ 第一番」。本作では、エッフェル塔でのクライマックスシーンで、ドラマチックに映画を盛り上げる。 カナダの雪深い村に住むフィオナは、パリに暮らす、マーサおばさんからの手紙を受け取り、勇気凛々フランスへと旅立つ。未知なる大都会パリで、さまざまなトラブルに見舞われながらも、風変わりなホームレスのドムをはじめ、いろいろな人々と出会う中、行方不明となった叔母を探すフィオナの、ひと夏、というにはささやかな冒険が、ビビッドに描かれていく。 主人公フィオナとドムを演じ、本作の製作、監督、脚本を務めたのは“ジャック・タチの後継者”といわれる、道化師カップルのドミニク・アベル&フィオナ・ゴードン。セリフに頼らず、道化師ならではの力強い身体表現を用いた本作は、バーレスクコメディ(踊りを主にした、おどけ芝居)と呼ばれ、刺激的なエナジーに満ちみちている。 例えば、冒頭の手紙が届けられるシーンでは、ドアを開けた途端


穴に落ちる、川を泳ぐ
映画『空(カラ)の味』 不幸ではないことと、幸せであることはイコールじゃない。けれども不幸ではないのに幸せを感じられないと、うしろめたさを覚えてしまう。 この物語の主人公、聡子(堀春菜)もそんな人間の1人だ。 両親と兄のいるおだやかな家庭があり、部活で汗を流し、友達とおしゃ...


不器用な人にやさしい、青色の都会
『映画 夜空は最高密度の青色だ』 4月の電車の中には、上京して間もない人たちの初々しさが漂っていて、懐かしい気持ちになる。聞きしに勝る朝の満員電車の恐怖や、乗り換えの難しさ(昔ほど大変ではないだろうけど)を、東京で新しく出会った人たちと、方言交じりでにぎやかに話す様子は微笑...


記憶色の映画たち
映画『マリアンヌ』より 昨年末、ある映画の撮影監督に取材した時「記憶色」というキーワードに、膝を打った。生っぽさにこだわった、ドキュメンタリーチックな映像を、グレーディング作業で、こってりと煮詰めた色味に仕上げたことで、ラッシュ時より、たいそう美しく感じたのだ。いわく「記憶...


2016映画ベスト10+3
2016年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 岩根彰子の10+3 © 2016「団地」製作委員会 1 『団地』 2 『シング・ストリート 未来へのうた』 3 『ディストラクション・ベイビーズ』 4 『この世界の片隅に』 5 『シン・ゴジラ』...
