

本→音楽と映画#4<br> 3.11をめぐって
小説『彼女の人生は間違いじゃない』 映画監督・廣木隆一の、初めての小説『彼女の人生は間違いじゃない』(河出書房新社)を読んだ。主人公のみゆきは、東日本大震災後も、地元・福島の仮設住宅で父親と暮らし、役所に勤める女性だ。彼女は時々、高速バスで東京へ行き、デリヘル嬢になる。目的...


冬の本棚
冬の読書は楽しい。寒い冬の夜にぬくぬくした毛布のなかで、あるいはあたたかいストーブの前で本を読んでいられる幸せは格別だ。そんなとき、鼻がつんとするような冬の空気や雪の冷たさを感じさせてくれる6冊。 「闇の左手」 アーシュラ・K・ル・グィン(ハヤカワ文庫)...


音楽と映画#3<br>『幸せをつかむ歌』
映画で、結婚式のシーンを観るのが好きだ。その土地の風土やお国柄、宗教、それぞれの家族が大事にしているもの、結婚するカップルのこだわりなど、ハレのセレモニーから、いろいろなことが見えてきて、俄然親しみがわくのだ。たとえば本作の主人公・リッキー(メリル・ストリープ)の次男ジョシ...

スズキの目
木曜時代劇「ちかえもん」 松尾スズキといえば少女Aである。 彼の初エッセイ集「大人失格」のなかに、高校生男子が口々に「少女A!」「少女A!」とわめいている姿を見かけた松尾スズキが演劇の未来を憂えるくだりがあり、読んで思わず声を出して笑ってしまった。これは陳腐な言い回しではな...


「紅灯」が照らす、すねもの・一葉の宇宙
美しい照明が照らす世界に、紅が映える(照明/中川隆一)。女性としては日本初の職業小説家といわれる、樋口一葉の評伝劇。24歳という若さで幕を下ろした人生を、彼女は猛スピードで駆け抜けたことだろう。書くことを生業に生きた女のわりに、黒木華ふんする一葉は、本郷菊坂を思わせる、大き...


俳優 安田顕
ドラマ「ミエルヒ」 “昏い”という言葉が好きだ。 特に人物を言い表すとき、“暗い”でもなく“陰気”とも違う。日が暮れて世界が淡々と色を無くしていくときのような、そんな雰囲気を持つ人を“昏い”と呼びたい。 5年前、HTBスペシャルドラマ「ミエルヒ」を見て、まっさきに頭に浮かん...


「よ」に弱い
映画『野火』 映画としての色気が、メッセージ性を軽く凌駕してしまっていた。 ある種の使命感や伝えるべきことがあって作られているはずなのに、それ以上に映画的魅力が画面からだだ漏れしている。 塚本晋也監督の『野火』は、そんな映画だった。...


たこ八つ〜井伏鱒二「画本 厄除け詩集」から『俳優 亀岡拓次』まで
元旦の朝、年末にSさんから贈られた、井伏鱒二の「画本 厄除け詩集」(12)を朗読した。厄除けや風邪よけのまじないとして、詩を書いたという井伏の詩は、煩わしさなどを笑い飛ばしてしまうドライさに溢れ、見開きを目一杯に使った金井田英津子の画の、濃やかで渋みのあるタッチもカッコいい...


2015映画ベスト10+3
2015年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 石村加奈の10+3 (C)松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ 1『恋人たち』 2『おみおくりの作法』 3『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 4『野火』 5『Mommy/マミー』...


音楽と映画 #2<br>「ニューヨークの巴里夫」
『スパニッシュ・アパートメント』(01)25歳、『ロシアン・ドールズ』(05)30歳、“青春三部作”完結編となる本作『ニューヨークの巴里夫』(13)では、ついに不惑を迎えた主人公・グザヴィエ。セドリック・クラピッシュ監督が“ライフワーク”と語る新作では、おなじみ、愛すべきダ...