
スズキの目
木曜時代劇「ちかえもん」 松尾スズキといえば少女Aである。 彼の初エッセイ集「大人失格」のなかに、高校生男子が口々に「少女A!」「少女A!」とわめいている姿を見かけた松尾スズキが演劇の未来を憂えるくだりがあり、読んで思わず声を出して笑ってしまった。これは陳腐な言い回しではな...

「紅灯」が照らす、すねもの・一葉の宇宙
美しい照明が照らす世界に、紅が映える(照明/中川隆一)。女性としては日本初の職業小説家といわれる、樋口一葉の評伝劇。24歳という若さで幕を下ろした人生を、彼女は猛スピードで駆け抜けたことだろう。書くことを生業に生きた女のわりに、黒木華ふんする一葉は、本郷菊坂を思わせる、大き...

俳優 安田顕
ドラマ「ミエルヒ」 “昏い”という言葉が好きだ。 特に人物を言い表すとき、“暗い”でもなく“陰気”とも違う。日が暮れて世界が淡々と色を無くしていくときのような、そんな雰囲気を持つ人を“昏い”と呼びたい。 5年前、HTBスペシャルドラマ「ミエルヒ」を見て、まっさきに頭に浮かん...

「よ」に弱い
映画『野火』 映画としての色気が、メッセージ性を軽く凌駕してしまっていた。 ある種の使命感や伝えるべきことがあって作られているはずなのに、それ以上に映画的魅力が画面からだだ漏れしている。 塚本晋也監督の『野火』は、そんな映画だった。...

たこ八つ〜井伏鱒二「画本 厄除け詩集」から『俳優 亀岡拓次』まで
元旦の朝、年末にSさんから贈られた、井伏鱒二の「画本 厄除け詩集」(12)を朗読した。厄除けや風邪よけのまじないとして、詩を書いたという井伏の詩は、煩わしさなどを笑い飛ばしてしまうドライさに溢れ、見開きを目一杯に使った金井田英津子の画の、濃やかで渋みのあるタッチもカッコいい...

2015映画ベスト10+3
2015年公開の映画ベスト10+その他印象に残った作品3本をピックアップ。 石村加奈の10+3 (C)松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ 1『恋人たち』 2『おみおくりの作法』 3『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 4『野火』 5『Mommy/マミー』...

音楽と映画 #2<br>「ニューヨークの巴里夫」
『スパニッシュ・アパートメント』(01)25歳、『ロシアン・ドールズ』(05)30歳、“青春三部作”完結編となる本作『ニューヨークの巴里夫』(13)では、ついに不惑を迎えた主人公・グザヴィエ。セドリック・クラピッシュ監督が“ライフワーク”と語る新作では、おなじみ、愛すべきダ...

文子さんから
漫画 『ドミトリーともきんす』 年に数回は『るきさん』を読み返す。あの話だけ、と思って手をのばしても一度ページをひらいてしまったらその手は止まらず、たいていおしまいまで読みきってしまう。かれこれ何度、るきさんの「それではチャオね」というあいさつを読んだことだろう。...

うわぁ、テクノのアロマテラピーや〜!<br>(彦摩呂風)
ドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』 “そうか、テクノという手があったか!”とテクノに救われたことが、これまでに三度くらいある。ちょっと煮詰まっていて、音楽も受けつけない状態の耳に飛び込んでくる、新しいサウンド。ロ...

ようこそ、パレードへ
映画『パレードへようこそ』 田舎の炭鉱町の福祉委員会で書記を務めるクリフ(ビル・ナイ)が、炭鉱夫たちを支援するためロンドンからやってきたゲイ&レズビアンの面々に、“黒い鉱脈”と呼ばれる石炭の層について語る場面がある。 「まずスペインから始まって、ビスケー湾の下を通って南ウェ...